バレーボールの社会人サークルに、兄を連れて行ってみた。
その続きの話。
🏐 異様な空気の中で
会場に着いてしばらくすると、
ポツポツと人が集まりはじめた。
3〜4人は仲の良い友達同士、他の数人は顔なじみのよう。
どうやら、完全な“初参加”は私たち兄妹だけらしい。
ひとり、女の子のような長髪の青年が「初心者です」と話してくれて、
私たち3人でボールを回すことに。
💥 ボールが、痛い
バレーのボールって、ちゃんとした公式球だとかなり痛い。
レシーブのたびに「イタッ!」って声が出る。
私はサーブもなかなか入らない。
それでもなんとか笑いながら練習を続ける。
その青年は、あっという間に上達していった。
一番へただったのは――兄だった。
「膝から受けてみたら?」とアドバイスしてみたけど、
兄はパワーだけで突っ込んで、コントロールがまったく効かない。
もしかして、自信を失いかけてる……?
でも、水分補給のときはいつも通り明るく、「全然サーブが決まらん」と話していた。
本心はどこまでだろう。
⚡試合開始、そして違和感
試合が始まる。
私は以前ちょっとだけ初心者バレーに出たことがあったので、
なんとなく「セッターの次に構えるべきだな」くらいの感覚はあった。
けど兄は、セッターの位置にいても無理な高さのボールに全力でアタック → ネットに激突。
全員、固まる。
その後も、私たち兄妹が入ったチームは全敗。
グーパーでチーム分けをしても、なぜかまた同じチームになってしまう悲劇。
私はとにかくつないで、走って、サーブも何とか1/2で決めた。
兄もサーブは悪くなかったけど、成功率はほぼ同じくらい。
見ていて、「なんとか兄のプライドを守りたい」と必死だった。
🧠 初めて知った、兄の特性
活発な男の子が新しく加わってきて、
プレイ中に「もうちょっと前」などポジションの指示をしていた。
私は「前に出ればいいんだ」と察して位置を変えた。
でも兄は、何度耳打ちされても後ろのまま。
その後も、ボールの順序や高さに関係なく無理やりアタックを打とうとして、
ネットに何度も突っ込む。
誰かがトラップしたら「それはできるんや!」と驚かれ、
変なタイミングでスパイクを決めたら、相手チームの男の子たちが笑いでズッコケた。
はじめて思った。
これが学校だったら、兄はいじめられていたかもしれない。
兄は、自分の動きを“その場”に合わせて調整することが難しい。
適応障害という言葉が、改めて具体的に輪郭を持った瞬間だった。
🧊 わたしが崩れたら、終わり
心のなかで、ずっと考えていた。
ここで私が心を折られたら、兄が立ち直れなくなる。
だから、失敗しても私は「ナイスサーブ!」「ドンマイ!」と声をかけ続けた。
兄が失敗しても、まわりがシーンとしても、私は声を出した。
それでも、ありがたいことに、
主催の子や数人の男の子たちは、時折「ナイス!」と兄にも声をかけてくれていた。
それだけで救われる場面が、何度もあった。
🩹 その夜、痛みのあとで
帰り道、兄は何度も笑いながら言った。
「全敗だった」
「サーブ、全然決まらんかったな〜」
その言葉に、私はむしろ心配が募っていた。
家に帰って自分の腕を見たら、
両腕が真っ赤な内出血になっていた。
重いものも持てないし、腕を下に下げるのも痛い。
でもその姿を見て、兄は笑った。
「でも、楽しかったよ」
2回も、そう言ってくれた。
ああ、今日は失敗だらけだったけど、失敗だけじゃなかったなと思えた。
💬さいごに
きっと、普段の生活に戻ったら兄はまたパチンコに行く。
だけど、こういう“うまくいかない時間”も、
“失敗”という経験も大事にやり直したい。
そして私は、痛みにじんじんする両腕を眺めながら、
「これもオイシイかも」と思っている。
コメント